自費出版?

友人が自動車保険の契約更改に来てくれた。謙虚にしなくてはいけないと思いつつも「ねえ、これ」と本を差し出してしまう。彼は開いてさっと目をとしたあと、裏返したりしながら怪訝そうな顔で眺めていた。しばらくあいだを置いた後、彼の口をついて出た言葉は「これはけっこうかかったでしょう」だった。私はそのことばを理解するのに、かれの逡巡と同じくらいの時間がかかった。彼はこれを自費出版したものだと思ったのだ。
夕食のときに両親に話したら、彼らも「こんなことをするのにはいったいいくら借金したのだろう」とひそかに心配していたらしい。