3度目の献血

わが生涯3度目の献血をした。

高校生最後の年、3年生の希望者は献血をした。もちろん「私にできるのはこんなことくらい」と私も手をあげた。ところが、当時は細身だった私は「お気持ちはありがたく頂いておきます」と体重不足を理由にご丁寧に断られてしまった。見事基準をクリアした友人たちは、記念品の折り畳み傘を開いたり閉じたりして喜んでいた。

それから幾星霜・・・。私は十分に栄養をつけて、再挑戦の機会のくるのを待っていた。しかし、自営業のため外に出ることが少なく、チャンスはなかなか訪れなかった。藤沢駅前で献血車に出会った時には、チャンスを逃してからなんと20年の月日が流れていた。十分に心の準備ができている私は、迷わず受付のいすに座った。漸く献血ができるのだ。

血圧、血沈などの検査はパスした。今度は体重でもはねられなかった。いよいよそのときがやってきたのだ。緊張に震える心を落ち着かせ、覚悟を決めて腕を差し出した。チューブの中を赤い血が流れていくのは見たくない。針をさされると同時に目をそらせて、ゆっくり深呼吸しながら時が過ぎるのを待った。はりが抜かれ、バンソウコウを貼ってもらって、私はゆっくり立ち上がった。か弱い私は、きっと立ちくらみがして、このまま倒れこむに違いない・・・・と心配したが、なんのなんの。血を抜く前の私と、終わった後の私はどこにも違いはないようだった。

念願の献血を終えて、私は飛行機のタラップを降りるように誇らしげな気持ちでバスを降りた。そんな私を花束を持った人が迎えてくれる。????・・・なにも、そこまでしてくださらなくても・・・。いや、私じゃない。きっと誰か他の人に上げるに違いない。戸惑っている私に「おめでとうございます。あなたは○○万リットル目の献血者です」とその花束を手渡してくれた。その上5000円の商品券のおまけまでついていた。20年待った甲斐があった。あの時手に入れそこなった折り畳み傘が、はれて私のものとなる日がやってきたのである。

それ以来私は献血車を見ると、花の蜜に誘われるように寄っていく。それで先日3度目の献血をしたというわけである。あれ以来2度とも400CCの血を抜かれて、ジュース1本でさようならである。