冬の風呂

浴用剤のコマーシャルは、冬場になるときまって、冷え切った体で帰宅して暖かい風呂で体を温めるというシーンが登場する。これまでは、あのコマーシャルを身近に感じることはなく、他人事として眺めていた。わが身のこととして感じるのは、12月の金曜日、忘年会などで遅くなって長いタクシー待ちの行列に並んで帰ったときくらいだろうか。


今年は、まだ晩秋だというのに、すでに何度かそれに近い経験をしている。現在の職場は、基本的に冷暖房は完備されていない。もっと寒くなればストーブをつけることもするようだが、これくらいの陽気ではそれもない。ババシャツを着て、カシミヤのセーターを着て、毛糸のストールを羽織って仕事をしている。それでも、日によってはいつのまにかキーボードを打つ手が悴んで、動かなくなってくる。


これまで、いろんな業種でいろんな形態で働いてきたが、ひとつ共通することはどこも十分すぎるくらいの「冷暖房完備」ということだった。厚着をすると働きにくいし、肩がこるので、真冬でもジャケットを羽織ることは少なかった。場合によっては、働きやすいように半袖のアンゴラのセーターで過ごした時期もあった。反対に、夏はストールなどを用意して、体を冷やさないように気をつけていた。こういうことは、現代ではあたりまえすぎることで、特に気にとめることも無くこれまできた。


いまさらながらそのありがたみを感じてはいるが、こんな自然に近い環境も、案外健康のためにはいいのではないかとも思い始めている。今年はこの環境に負けないために、指先をカットした手袋を探して、仕事中の手の冷えを防ぐことにしよう。


そうして、帰宅したらまずゆっくりと風呂に入り、体を温めてから夕食の支度に取り掛かることにしましょう。