100円ショップに潜む魔物

夫が、何の目的かわからないが100円ショップに行ってきたと言う。
文房具などは時々買いに行っていたようだが、それほど大した目的があるとは思えない。むしろ通りすがりにふと車を停めたといったところだろうか。
で、今回は何を買ってきたかというと100円(あたりまえか)のパンツ。5枚ほど買い込んできたらしい。結婚以来30何年、ただの一度もパンツなんか買ったことがないというのに。
「なぜ?」と問うと、足りなくなることがあるからとかなんとか言う。古いものを捨てて、洗濯が滞ってタンスにパンツがなくなることは、たしかに何回かはあった。でも、買い置きもたくさんあるし、まったくもって危機的な状況ではない。
二人の会話を淳子があきれて聞いている。買い置きがたくさんあるという私に、それをタンスの中に置いておけばこんなことにはならないと言う。ここに買い置きがあるからと夫に何度も見せたはずだし、タンスの中にも何枚か入れておいたような気はするが…
出先のことなので、確信はない。娘の前でくどくどとこういう話をするのは好きじゃないので、適当なところで折れて話を切り上げた。
帰宅して調べてみると、やはりタンスの中には3個、新品が封を切らずに置いてある。おまけにストックを置いておく場所にも5個入っている。古くなるとゴムが伸びやすくなるから、こっちから先に使ってほしいと言うと、新品はもったいなくて封を切れないとかなんとか、分けのわからない言い訳でゴニョゴニョと口を濁す。
しばらくいろんなやり取りがあったが、彼も納得する結論を私は出した。
つまり、「100円ショップでモノを買うこと」が今回の彼のテーマであって、パンツはたまたま目に付いたものだったということだ。不足勝ちだのなんのということはとってつけた言い訳で、それが理由でないことは明らかになった。
ともあれ、彼は100円のパンツを履き心地がいいと喜んでいる。さすがに洗濯したらだめになるだろうなという予想はしているようだが…
じつは、あまり夫を責められないと思う部分もある。私自身も用があって行っては、不要なものまで買い込んでしまうことがよくある。
まったくもって100円ショップということろは、恐ろしい魔物が潜んでいると思う。