転倒!

天神尾根で派手に転倒した。大きな段差を降りようと、ステッキに思いっきり体重をかけたときだった。
ステッキが折れて、そのまま右に体が倒れこんだ。一瞬空白になったあと、あ、ここでこうして倒れて、岩で頭を打って死ぬのか… 人間死ぬってこんなに簡単なんだ… そんな思いがスローモーションのように浮かんでくる。その瞬間、本当にゴツンっと岩に頭があたって帽子がコロコロと転がった。
幸いにも死ぬことはなかったが。頭、手の甲、腰、太もも、と体の右側をいやというほど打った。頭は大きなこぶができ、手の甲は擦り傷と血豆ができた。腰は青あざが二つ、太ももは青あざと擦り傷だが、それぞれの傷は浅かった。帽子、手袋、ズボン、全て登山の服装のお手本のように、厚手のものを身につけていたことが幸いしたようだ。
このメンバーでの山行きは2度目だが、前回は足が攣れて荷物を持ってもらったり、山頂でマッサージをしてもらったりした。そうして、今回がこのありさま。毎回何人もの人に迷惑をかけている、なんとも厄介な同行者だ。

■後日談
同行の「文学少女」が詠んでくださった一句。

杖折れて わが身の刹那 走馬灯 人の心の 温かきを知る

「…走馬灯」まではまったくそのとおりだが、「人の心の温かきを知る」には深く反省させられた。皆に心配をかけたことを申し訳なく思い、感謝もしたが、果たして十分だったろうかと…
この下の句は、今後の山行の戒めとしよう。