くすり

医者に行ったときのこと。「げっぷがひどい」という私に、医師は「胃が正常に活動していないようですから、しばらく薬で様子を見ましょう」と薬を処方してくれた。薬局で出された薬の名は「ガスコン」。あまりにもストレートなその名前に、思わず効き目を疑ってしまうほどであった。このネーミングのセンスに、関西のにおいを感じるのは私だけだろうか。

「ガスコン」とは、大衆薬ならともかく、処方箋によって出される薬にしてはめずらしい名前である。処方薬は、記号、番号しかないものも多く、何種類かある薬のそれぞれの効能を調べるのに「薬の本」に頼らなくてはならない。

一方、市販薬の名前にはさまざまなスタイルのネーミングがあるが、その薬のもつ代表的な成分の名前を、部分的に使ったものが多い。それがちょっと難しくて「何だか訳が分からないがありがたそう」な名前になっている。そして、かなりの割合で最後に「ン」がつく。薬の名前についている「ン」は、「運」に通じることを意識してつけられているという。この「ガスコン」も、はからずもその要素を満たしてはいる。

すべての薬が「ガスコン」のように、中身をあらわす名前になったら面白い。名前を見ただけでその薬の効能が分かるようになれば、薬に戸惑うことも少なくなる。そうして、「薬の本」を開くことなど、あまり必要なくなってしまうかもしれない。