フェイク

「フェイク」をみて、これまで長い間心の中にわだかまっていたものがスーッと引いたような気がする。そのわだかまりは、「レオン」を見た後からずっと心にひっかかっていた。
レオンは殺し屋と不幸な女の子との物語である。この映画はレオンと女の子との心の交流に感動しなくてはいけないのだろうが、なぜか私はしっくりしないものを感じたのである。
自分の気持ちをうまくまとめられないが.......。
愛情だけでは大人と言えない。
レストランのオーナーに預けていた金を、女の子のために使ってほしいと言う願い。でも絶対に、どう見てもだまされている。あの子は結局親が死ぬ前に学費を払っていた学校へもどっただけでしょう。これが一番心に引っかかっていた。
信頼できる人とそうでない人を見分ける力がない。
自分一人生きているのならよいが、ふとした事から行き会った女の子に対する責任感をもつことはできないのか?
なんか歯がゆい。
アルパチーノの演じるレフティは人情に流されるだけの、出世もできず、うだつのあがらないマフィアではある。年がら年中金がなく、ドニーから借りたりしている。しかし最後の一言で私の彼に対する評価はこの上ないものになった。
「おまえだから許せると伝えてくれ」と言い残して静かに出て行く姿に、私は涙がとまらなかった。心から人を好きになったからこそ、言える言葉ではないか。信頼できる人間であるか否かを見抜く力は大切である。心の底から信頼できると感じた人間には、たとえ裏切られても満足感のようなものがあるのではないか。それをこの一言で見事に表現しているように思えた。欺かれたのはあくまでもドニーの仕事上のことで、個人としては十分信頼でき、心が通い合っていたと感じることができたのであろう。