成長

「どれがおいしいかしら...」フロントの前でお菓子を選んでいるお客様が、マサグチにたずねた。すぐ後ろにいる私に何か聞いてくるかと思ったが、彼は即座に「味好みがおいしいと思います」と答えていた。会計を済ませた後でそっと「味好みおいしいですよね」と私に同意を求めた。
私にはマサグチが昨年末頃から急に成長したように思える。先日は「301が調子悪かったので、Aタイプの値段で304を使った」と数日後に報告を受けた。それまでは、私が家に帰っていても電話をかけてきて、何かにつけて私の判断を仰いでいた彼が、自分で適切な判断をしてくれるようになったのである。さらにラスト近くなってくると、黙っていてもレジの計算を始める。このような事はこれまではなかった。
年末年始は瀧川さんが一週間ほど休むし、今年は杏子がいない事もあって、私は朝から店に出る事が多かった。そこで多少の無理は承知で、マサグチと池上に幾日かラストをやってもらった。池上は一年ぶりのアルバイトで、動きがぎこちない。それでも、かなり忙しい日でも私を呼び出す事なく、二人だけでがんばってくれた。それがよかったのだろうか。