雪の日の後日談

矢沢さんは1月8日午後4時40分に、町田の会社を出た。中央林間まで来たところで電車は動かなくなってしまった。彼は登山が趣味で、足には自身がある。そこで思い切って茅ヶ崎の自宅まで歩くことにした。歩きはじめた時には、すでに8時45分になっていた。
仕事の帰りなので、履いているのは革靴。幸いなことに、かさと手袋は持っていた。大和の駅を過ぎる辺りまでは、小田急線に平行した道があり、人もおおぜい歩いていた。とりあえずそのまま湘南台に向かうつもりだったが、桜丘辺りから道がわからなくなった。途中「茅ヶ崎」の標識が目に入り、その方向に歩いた。しばらくして気がついたら、用田の辺りを歩いていた。かなり遠回りしているようである。12時を過ぎた頃から雪は止み、空には月が出て辺りは明るくなった。自宅には1時40分についたという。暖かい風呂に1時間ほどゆっくり浸かって、やっと手や足の感覚が戻ってきた。
雪の日のことは何人かに聞き、私の知る限り、お菓子の配送のお兄さんが一番大変だったと思っていた。しかし今では矢沢さんの5時間の「雪中行」が断然トップに躍り出た。