江戸時代の火消しさながらに、揃いの半纏に身を纏った60代前後のお客様が8名来店した。私ははじめ何の疑問も持たずに、彼らを「消防士」と思っていた。1時間ほどたったろうか、ふと「!!そんなはずはない」と改めて彼らをみて考えた。確かに江戸時代の火消しはこの格好だった。しかし当たり前のことであるが、現代の消防士は違う。何を勘違いしていたのだろう。
半纏の背には、丸の中に勘亭流のような文字で「一番」と書いてある。それで次には神輿の同好会の人たちと思った。トマトには何組かの御輿の同好会のグループの人たちがみえるが、みなひざまでの丈の半纏を着ている。しかし彼らの半纏は白や、紺一色のものが多い。今日の人たちのものは紺色の地に赤と白を使い、生地もしっかりしている。これはかなり高価そうである。加えて着ている人たちも独特の雰囲気を持っており、どうみてもただ者ではない。私は本当のところを知りたくて、その内の一人に聞いてみた。すると彼らは鳶の親方衆で、新年会の帰りだと言う。出初め式などの際に同じような姿で、はしご乗りを披露しているのを思い出し「そう言えば」と納得した。
鳶は危険を伴う特殊な職業である。そのため熟練した鳶職人は、他の職人たちから一目置かれ、とりわけ誇り高い男たちと聞いたことがある。その頭衆がこのように揃うと見事である。彼らはいずれもほれぼれするような貫禄があり、「極めた」人たちだけが持つ、美しさと威厳を漂わせていた。