輸入自由化

母が兄の家でできたと、キウイフルーツをもってきてくれた。最近では、この辺りの家の庭にも実っているのを見かけることがあるが、私がキウイフルーツを初めて食べたのは、17〜8年前のことだったと思う。その頃はニュージーランドからの輸入品で、一つ180円ほどだったと記憶している。立派な木の箱に入り、一箱5000円のものを、おつかいものにしたこともあった。子供たちの小学校の給食に半分に切ったキウイフルーツが出ると聞き、驚いたのは15年ほど前だろうか。その頃から輸入が自由化になり、しだいに入荷量が増えてきた。さらに、日本でもみかん農家がオレンジの自由化対策として栽培するようになったことで、いつのまにか1個100円を切るまでになった。
このように昔は高価だったものが、自由化のおかげでふんだんに手に入るようになったものはいくらもある。それらを考えるとき、まず一番にバナナを思い浮かべるのは、私たちの年代から上の世代であろう。
私が高校1年生のとき、同級生が「東京のおばさんの家に行ったとき、バナナが房で出てきた。どっちから皮をむいたらよいか分からなくて困った」と話していたことが今でも心に残っている。バナナを丸ごと一房など、目にしたことすらない時代であった。
その次のバナナの思い出は、私が就職した年のことである。季節は忘れたが、私は休暇を取り実家に帰った。それを喜んだ父が「景子が帰ってきたから、バナナでも買ってきなさい」と言い、母は近くの八百屋で、4分の1ほどにカットされた房を求めてきた。それは無造作に新聞紙に包まれていたのである。実はこの頃はすでにバナナは自由化になり、高価なものではなくなっていた。しかし父にとっては依然としてバナナは高価で、人を喜ばすためのものであった。あれから四半世紀を経た今、私の子供たちはバナナなど見向きもしない。