夫の母がなくなった。

潔いともいえるほどの、まことにあっけない最期だった。

夫から、母が大動脈瘤で緊急手術をすることになったら、病院へ急ぐようにと電話があったのが16日午後5時10分ほど前。

急ぎ病院に駆けつけたが、兄弟たちに連絡をとるために携帯電話を使いに病院の外へ出ている間に母は手術室へ運ばれてしまった。気丈な笑顔で皆によろしくと挨拶をしていったという。これが6時頃。

続々と親族が集まり、交代で休憩しながら手術の終るのを待つ。

 腹部大動脈瘤の約9割は動脈硬化が原因で、瘤が6cm以上に拡大すると破裂の危険性が高くなる。破裂前に瘤を取り除く場合は、治癒率が高くそれほど怖い病気ではない。しかし、破裂後の手術死亡率は50%近くで、手術そのものも危険を伴うものだという。手術は通常6時間から8時間。

深夜1時過ぎに手術室前に近親者が呼ばれ、経過の説明を受ける。

出血が止まらず血圧が低下し、手の施しようがない状態で、仮に持ち直したとしても重い障害が残ると言われたのは1時半前。できる限りの孫達に連絡をし、病院にくるように言う。ほとんどが間に合って、最期の旅立ちを大勢で見送ることができた。

母は、気分が悪いと病院に行ってから13時間後くらい、手術が始まってから8時間半くらいで亡くなってしまった。

今、母は声をかければ「はい」といって起きてきそうな、安らかな顔で眠っている。会いたい子ども達に会えないまま逝ってしまったことは心残りだろうが、苦しまないですんだということは本当に幸せなことだと思う。