私の映画歴

HAMAさんがid:lunch_lunch:20050825に下さったコメントで、久しぶりに昔見た映画に思いを馳せた。
私は映画好きの父に連れられて、小学校低学年の頃から月に2回ほど映画を見ていた。
そのころは東映時代劇の全盛期で、見る映画はすべて東映の時代劇だった。ヒーローはひたすらかっこよく、勧善懲悪のストーリーは明快で子供の私にもすんなりと理解できる内容だ。ときたま子ども向けの映画も見たが、割合からすると少なかった。
それから、現在に至るまでいったい何本の映画を見たことだろう。ほとんどの映画は題名はもちろん、どんな内容だったかも覚えが無い。ただ、いくつかのシーンはいまだに鮮烈に記憶に残っている。
私の映画好きを決定付けたのは、小学校4年生のときに見た「十戒」だった。

十戒 [DVD]

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地方都市の、いつも見ている映画館とは比べ物にならないくらい立派な映画館に入ったとき、多くの立ち見客でスクリーンは見えなかった。大人の足をかきわけて前のほうに出たとき、そこにはこれまで見たことも無い世界が広がっていた。シナイ山に登ったモーゼが神に出会うときのときのシーンだった。それまでの私の中に残るシーンといったら、「里見八犬伝」や、「日本誕生」のクライマックス部分だった。
それが、外国の映画をはじめて見たのが、まばゆいばかりのシーンだった。今までの映画はなんだったんだろうかというくらい、強い衝撃を受けてしまったのだ。それ以来チャンバラがつまらなく、物足りなくなってしまった。
それから次は、「恋のなぎさ」のカトリーヌ・スパークの「足」がいまだに目に焼きついている。テーブルの上に乗ったカトリーヌ・スパークが、椅子に腰掛けているジャック・ペランの両肩に足を乗せるシーンがある。この足が、それはもうきれいで、高校生くらいだったと思うけど、私の手よりきれいな足を見て、足ってこんなにきれいなんだって驚いたことを覚えてる。
「ブーベの恋人」のクラウディア・カルディナーレも美しかった。私の知る限り、クラウディア・カルディナーレが髪をショートカットにしているのはこの映画だけだ。
ブーベの恋人 (トールケース) [DVD]

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あの頃はイタリア映画の全盛期だった。いろんな映画を見て(自転車泥棒はずっと後になってみたので)イタリアの明るさに惹かれたものだった。最後のほうで、「ひまわり」を見てからなんだか映画って私の思っていたのとちがうんじゃ無いかと思うようになってきた。あれほどかっこよかったマルチェロ・マストロヤンニが、演技とはいえ、あんなにもさえない中年男になってしまうなんて…とすっかりブルーになってしまった覚えがある。子供のころの東映時代劇がトラウマとなって、何の憂いも無い、ひたすらハンサムで、明るく、かっこいい生き方をしているのが、わたしの思い描く「主役」の姿だったのだ。
ひまわり《デジタルリマスター版》 [DVD]

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60年代はフランス映画もよく見た。もちろんトラウマの関係で、私はアラン・ドロンのファンだった。ジャン=ポール・ベルモントのようにつぶれた鼻の持ち主はあまり好きにはなれなかった。それでも、ネバダ・スミスがひざを抱えて眠る姿を見ていとおしく思うなど、次第にハンサムなだけのヒーローは物足りなく感じるようになっていった。「アラビアのロレンス」とか、「ドクトル・ジバゴ」とか、少しずつ私の思い描いてきたものとは違ったヒーローや、ストーリーの映画を見る機会も増えてきた。そのころからハリウッド映画が盛んになり、フランス映画もイタリア映画も見ることが無くなった。 
ドクトル・ジバゴ 特別版 [DVD]

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いま、60年代から70年代の映画のリストが手元にあるが、それぞれ50本ある中で、ほとんどの映画を見ている。でも、難解そうなものを見ていないというところが、いかにも私らしくて笑える。