サンフランシスコ到着

入国審査は時間がかかっているらしくて、長蛇の列だ。効率よくはけるだろうと思い、お母さんと息子二人という家族連れの後ろに並んだのが大きな間違いだった。どうやら東南アジアからの不慣れな旅行者のようで、手に持っているブランクの入出国カードを見せてどう書いたらいいか聞いてくる。ここにファミリーネームで、ここがファーストネームでというが通じない。パスポートを見せてもらって教えてあげようとするも、ベトナム人なのでどれが姓でどれが名か、私には判別できない。仮にここをクリアしたとしても、滞在先の住所だとか、関税品の申告書だとか書くことはたくさんある。とにかく言葉がまったく通じないんだから、私は必要な項目を埋めるための手助けはできない。そうこうしているうちに、彼女たちの番が来た。
係官は、なにかこういうものは持っているかと、しきりに手振りで伝えようとしている、しばらくのやり取りのあと、ベトナム人のお母さんが出したのは分厚いA4の書類と、その他いくつかの封筒。それを受け取った係官は、他の係官にベトナム人親子を引き渡した。お母さんと子供たちは私に礼を言って、係官の後をついていった。
そんなわけで、ここで大きく時間をとられてしまった。
眠い。乗り継ぎ便を待っている間に思わずうとうとと寝てしまう。気がつくとチェックインが始まっている。思わず、チケットを握って駆けつけると、まだ2時間も前のフライト。日米の時差に加えて、目的地と乗り継ぎ地の時差。ややこしいったらありゃしない。
日本だったら、誰かの上時計をチラッと盗み見ればすむことだが、ここではそうはいかない。今ここから、二人の腕時計が読み取れるが、片や1時20分、もう一人は11時20分を指している。前者ならフライトの時間はとっくに過ぎている。後者ならあと1時間ある。結局自分で計算するしかないが、その計算が正しいかどうか確固たる自信がもてない。ここではパブリックな時計しか信じてはいけないのかもしれないが、どこを見回しても時計がない。結局出発便案内のモニター画面で、大体の時間を推測するしかない。