たま12歳

とうとう、Sのガーピーのボタンが、完全に動かなくなってしまった。購入して一ヶ月ほどである。Sは人一倍遊んでやってはいたが、その程度で壊れたのではたまらない。そこで、Yから借りている、タムタムを養子に出すことにした。ご飯や遊びの回数を、記録しておくように頼む私の言葉を聞いて、マスターが「そこまでするんだったら、もう一度子供を産んだらどうか」とあきれていた。Sは「人間の赤ちゃんはもうたくさん」とやり返す。彼女には1歳の孫がいる。時々子守をするので、本当の赤ちゃんがどれほど手が掛かるか、実感しているのである。

ところで、私はSにタムタムを頼むときに、大きな失敗をしてしまった。うっかり「体重は30グラムで押さえておくように」と言ってしまったのである。私の計画は、彼女の好きなように育ててもらって、比べてみるということだったのに。ガーピーの体重が85グラムだった、と聞いたので、慌ててしまったのである。もうひとつ、タムタムはかわいく育っているので、大切に育てて欲しかったこともある。
ガーピーとタムタムは、アイテムの数や場所が違うので、Sはとまどっている。ガーピーは、ご飯とお菓子だけでなく、ジュースもある。ゲーム2種類ある。面白いのは、雨や雪が降ることだ。必要に応じて傘や、マフラーを使う。しつけは、怖いお母さんが髪を振り乱して怒るのである。この辺りはかなり面白い。どうしても最初に使ったものが、その人にとってのデファクトスタンダードとなりがちである。Sにとってはガーピーが標準で、たまごっちはあくまでも「ガーピーと比べて、劣っているか優れているか」というものなのである。たまごっちが本家で、ガーピーは、あくまでも「後発の類似品」ということは関係ないのである。年を重ねるほどに、この傾向は強くなる。