初台再訪                         

lunch_lunch1999-09-01


Yのマンションは山手通りと、甲州街道が初台で交わる辺りにある。マンションから山手通りに出て、北側を見るとオペラシティが高くそびえている。
そこから歩いて10分のところに、私がすんでいた家(30年前の姿のままで建っているのを、先日確認しておいた)がある。Yのマンションに泊まった私は、カメラを持って散歩に出た。

その家の姿は変わっていない。私が住んでいた部屋もそのままに、一瞬時間が止まったような錯覚に陥ってしまう。しばしたたずんだ後、後ろにそびえるオペラシティが歳月の流れの大きさを感じさせて、現実に引き戻される。
そのアパートには風呂がなく、私は少し奥まったところにある銭湯に通っていた。どの辺りだったろうか....自然に足が向き、この辺りでは....と角を曲がった私の目に、高い煙突が飛び込んできた。
何度もペンキを塗りなおしたような煙突は、あの頃と変わってはいないようだが、建物の正面に廻ると、入り口は現代風に化粧されていた。この建物になってからもすでにかなりの時間が経っているようである。
看板も「湯屋:KANEKI」と、いかにも新しい施設のように振舞ってはいるのだが.....。この銭湯に私は何度通ったのだろう。
この代々木警察の前を通って初台駅に通ったものだが、ここにも当時の面影はない。この建物は私がここを去ってから数年の後に建ったものらしい。
すこし歩くとオペラシティーの前に出る。ファインダーに納まりきらない高さの建物が、青空にそびえている。ここは何があったところなのだろう。
オペラシティーの前の植え込みにはごく普通の植物が植えられている。この季節のススキの穂は一足早く秋の訪れを告げているようでうれしい。
高価なものでない、流行りのものでもない。どこにでもあるような植物が季節を感じらさせてくれると同時に、どこか郷愁も感じさせてくれる場所である。都会の喧騒を忘れるためにッこを訪れる人がいるかもしれない。
一足早い秋の隣に咲き誇る夏の花は今年の気候の不順さを物語っているようだ。
名も知らないどこにでもありそうな花もひっそりと咲いている。