新しいおもちゃ

先日夫の母に携帯電話を買ってあげた。83才(たぶん)の母に使いこなすのは無理だとは思って。それでも持っていればどこからでも電話をかけることができるので、何かのときに便利ではないかと思ったのだ。

昨年の内に買っておいたものだが、迷惑がられたらどうしよう、他の兄弟から苦情が出たらどうしようと迷って渡さないでいた。一ヶ月近くもほうっておいたろうか、先週漸く母に送呈した。母は、この年齢で携帯電話を使うなんて人はほとんどいないだろう、と思いのほか喜んでくれた。私が簡単に作っておいたマニュアルを片手に、一生懸命操作を覚えようとした。娘や息子など一通りの電話番号をインプットしてあげたものを、何度かかけたり、かかってきた電話を受ける練習をした。

その後様子を伺うために何度かかけてみたが、電源が入ってなかったり、呼んでも出ない。まあそんなところだろうと、驚きもがっかりもしなかった。今朝夫が、母から電話があったといっていた。私が入力した姉の電話番号が間違っていて通じないという。都合のいいことに今日は仕事が休みなので、母を呼んで、もう一度練習した。帰る時、きれいな袋に携帯電話をしまいながら母は「嬉しくって嬉しくってもう一人娘や息子が増えたみたい」と言葉を弾ませて言った。

夕方になって母が「やっぱりこんなにいいものをただで頂くのは悪いわ」と電話をかけてきた。電池の残りが少ないと私に指摘されていたので、充電が済んだと報告したかったらしい。幾つになっても、新しいおもちゃを持つと嬉しいらしい。もう少し練習して自在に使いこなせるようになったら、どんなにか楽しくなるのだろう。生活にメリハリがついて、明るく楽しく暮らせるようになる。