靴屋の商法

私は20年近く同じ靴屋で靴を買っている。

そこには私の好みの、ちょうどよいサイズの靴がそろっている。チェーン店なので私がいける範囲に数店あるが、気に入ったデザインのものが置いてあるのは主に新宿の地下街にある店である。通りがかりに立ち寄って気に入ったものがあったら買う、ということをかれこれ20年も続けているのだ。

先日も、仕事の帰りにちょっと遠回りして寄ってみた。なんと、なんと、店内の様子はガラッと変わっていた。その店には主に2種類のサイズがあって私はWELL FITというデザインも履き心地も(ちょっと広めでゆったりとした、早い話がおばさん向け)ものを好んでいる。ところが、見事に様変わりしたその店には赤、青、紫、黄色と実にカラフルなサンダルやミュールが飾られている。ものすごくきれいで明るく楽しいのだが、どれも私などがはけるデザインではない。サイズも若向けの細身のものだけで、WELL FITはひとつもない。

かなり疲れて足の裏が痛いのを我慢して足を伸ばしたというのに、なんということだろう。この店はもうおばさんは相手にしていないのだ。おばさんはほうっておいて、若い人たちだけを相手にしようと考えたのだろう。

たまたま今日読んだ雑誌には、巣鴨のとげ抜き地蔵通りの商店街の繁盛振りが載っていた。とげ抜き地蔵を訪れる年代の購買力と、訪れる回数はとても魅力的で、商店街では思い切りターゲットを絞り込んだ商売で、繁栄に成功しているという。

私の好きだった靴屋は、靴に関するおばさんの購買力と頻度を見限ったということだろう。おばさんの恨みはおそろしいんだぞ・・・・。